J-Winは、ダイバーシティ・マネジメントを支援します。
メンバー活動
2017年度
2018年2月5日にJ-Win 第7期High Potentialネットワーク2月度定例会が行われました。
2018/06/26
J-Win第7期High Potentialネットワーク 2月度定例会が、2018年2月5日（月）に東京ウイメンズプラザで開催され、約200名のメンバーが参加しました。
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■組織を変えるリーダーとは
第7期最終回の定例会のテーマは「組織を動かすリーダーになる」。
前半は、中日本高速道路株式会社、元代表取締役会長兼社長 金子 剛一氏による講演「変革のためのリーダーシップ〜自ら一歩踏み出そう〜」を行い、組織を変えるリーダーに求められる考え方や、そのために取り組むべきことについて、具体的な経験談を交えながらお話しいただきました。
後半はワークショップを行い、第7期活動のファイナルステップとして、「Women to the TOP！」を目指すこれまでの取り組みを総括し、リーダーとしての自身のあり方を考える会となりました。
以下に講演の様子をダイジェストでご紹介します。
(＊肩書き等は講演当時のものです。)
変革のためのリーダーシップ
〜自ら一歩踏み出そう〜
中日本高速道路株式会社 元代表取締役会長兼社長 金子 剛一 氏
●企業の成長には、社会の変化に応じたイノベーションが必要
ビジネスの世界では、かつては生産国、消費国という位置づけがありましたが、今やどの国でも生産があり消費があり開発がありイノベーションがある、いわゆるフルグローバリゼーションの時代です。また、IoT やAI などの技術が大きく社会を変えていくことが、企業にも影響を与え始めています。皆さんの企業が今までに経験してこなかったことが、これから起きようとしています。これからの時代においては、どんな困難な状況にあっても、まずは今何が起きているかをしっかり分析し、不透明な分からないことから逃げずに改革に取り組んでいくことが、企業の成長のためには必要です。
●オーナーシップを持って危機感を伝えることが人を動かす
私は、1997年から約3年半の米国3M赴任を終えた後、成長が落ち込む日本の住友スリーエムの改革に乗り出しました。当時、日本と米国を比較すると、社員個人の能力に差があるわけではないが、仕事のやり方や働き方、特に事務系の生産性が大きく異なっていました。また、米国では女性が活躍しているという点も大きな違いでした。こうした背景にあるのは、職場に共通する習慣や行動、価値観の違いです。一言で言うと「企業文化」になりますがこの企業文化が個人の生産性に大きく関わっていました。そこで、日本のスリーエムの企業文化を変えることで、個人が本来の能力を発揮できるのではないかと考え、企業文化の変革に取り組みました。制度や組織といった目に見えるハード面をまず変え、その後に考え方や行動を変えるソフト面の改革を行いました。年功序列の廃止や、業績と能力による評価制度の導入、女性活躍推進なども行いましたが、大事なのはソフト面です。人事制度を変えたとしても、行動が変わらなければ文化は変わりません。「なぜ変えるのか、変えることでどのような世の中になるのか、それに対して一人ひとりはどう関わりがあるのか」ということを論理的に説明することが大切です。改革を進めるうちに、まず若い世代への共感が広がりました。また中間管理職の人たちが私の分身のようになり、自らの行動で示し伝えたことが、社員3000人の古い行動を変えていく大きな力になりました。人の考えや行動そして会社の文化を変えることは大変です。「今日変えなければ我々は生きてはいけないのだ」という危機感を伝えていく必要があります。最も大切なのは、社員自ら変えていくというオーナーシップを持って取り組んでいくことではないでしょうか。●リーダーに必要なのは「論理的な思考力」「合理的な判断力」「情熱的な行動力」
もう一つ、企業の改革に取り組んだのが、中日本高速道路株式会社です。2005年に代表取締役として改革に参加することになった際、会社は民営化後5年を経過していましたが未だ残る古い体質が課題でした。一般の民間企業との最も大きな違いは、市場における競争がないという点です。道路の運営、整備計画は、法律で決められたことを遂行していますが、逆に言うと法律で定められていないことを行うという考えはなく、そこではイノベーションは存在しません。私がそこで求められた役割は「活力のある民間会社への変革」。まず、自分たちで考え、自分で行動し、自分たちで決めるという文化を作る必要があります。将来15年20年30年後にどうありたいのか、ビジョンと目標を決め、そこに向かうロードマップを作っていこうと具体的な戦略を考え、進めていきました。
リーダーシップの役割とは、組織を決めたところに決めた形に持っていくため、人を動かし、その組織を変えていくことです。人を動かすために大切なことが3つあります。1つ目は、どうしたら目標にたどり着けるかを説明できる「論理的な思考力」です。2つ目は、そのために何に力を入れるべきかを決める「合理的な判断力」。3つ目は、頭で描いたことをどのように伝えるか、あるいは自ら行動するかという「情熱的な行動力」です。この3つがリーダーとして求められる条件ではないかと思います。大事なことは、まず今目の前にある課題に自らが飛び込んでいくこと。自分が積極的に関わっていくという姿勢を持ち、会社を変えていこうとすると、それが企業文化の変革に繋がり、やがては国全体の文化の変革に繋がっていくと考えています。
●女性ならではのしなやかさで変革への挑戦を
変革のために欠かせない要素のひとつが、女性の活躍です。日本における女性の活躍推進は欧米と比較するとまだ低い水準にあると言わざるを得ません。この背景にある大きな要因の一つは、女性自身の意識改革だと考えています。職場や家庭で、男性が中心、男性がリードすべき、あるいは男性と同じように取り組むのは無理だと考えてしまうことが一番の要因ではないかと感じています。男女ともに意識改革をし、行動につなげ、解決する道を見つけていくことが大切でしょう。次に意識改革とともに必要なのは、具体的なサポート体制の構築です。出産や子育て、介護などによる離職は、日本社会全体の課題です。自社の中で、すぐに実現することは難しいと感じるかもしれませんが、それぞれの企業で進んでいる点、遅れている点があると思います。進んでいる会社の取り組みは、誰がどのように推進し、どうして実現できたのか、どうやって説得したのかなど、ネットワークを活用してさまざまな情報交換を行ってください。そして、その中から出てきたヒントを今度は社内のネットワークに持ち帰り、情熱を持って説得していくことが大切なのではないでしょうか。
ストレートな意見をしなやかに発信できるのは、女性ならではの良い特性です。しっかりとした芯を持ち、くじけずに、柔軟に対応できる力をぜひ磨いていってください。磨くということは変革への挑戦です。上品にしたたかに、戦略、戦術を作り、失敗を恐れずに明日から一歩を踏み出してください。
〜講演・ワークショップの感想 〜アンケートコメントより〜
- リーダーシップの条件を、非常に明確で分かり易い言葉で示していただき、今の自分に足りていない部分をあらためて考えるきっかけとなりました。また「理念」に関しては、組織にとっても個人にとっても根幹となる非常に大切なものだと感じました
- 火中の栗を拾い苦労する経験がリーダーシップのために必要だということ、リーダーシップは部下に対してのみ発揮するものではないこと
- みずから課題にとりくむこと。そして深く何度も考えること。使命感をもつこと
- 最後の定例会で改めてキャリアデザインをしっかりおこなって、自分でチャンスをつかんでいくことが大事と認識できた
【金子 剛一 氏のPROFILE】
1968年、住友スリーエム株式会社入社。原価部長、財務本部長、取締役財務本部長を経て、1997年、米国の3Mアジア太平洋地域ファイナンシャルディレクターに就任。2000年以降、住友スリーエム株式会社取締役人事部長、常務取締役、代表取締役副社長などを歴任した後、2009年に特別顧問に就任。2010年、中日本高速道路株式会社代表取締役会長兼社長に就任し、2014年より相談役。