このインタビューは2019年10月におこなわれました。肩書等は実施当時のものです。
サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長 新浪 剛史 氏
内永 サントリーさんは2014年に米国蒸溜酒メーカーのビーム社を買収されるなど、グローバル化を積極的に進めていらっしゃいます。そのためには女性の活用も不可欠になるのではないでしょうか。
新浪 おっしゃる通りです。サントリーホールディングス・サントリー食品インターナショナルの女性役員は3名(2018年末時点)とまだまだ少ない。今後数年の間にはもっと人数を増やしていきたいと考えています。ただ、単に役員クラスに女性を登用するだけでなく、部長・課長クラスの女性比率を増やしパイプラインを充実させるべく、様々なアクションを進めています。
内永 素晴らしいお考えですね。サントリーさんは、管理職一歩手前までの女性比率はすでにかなり高くなっています。その先の意思決定層への女性登用をさらに進めるために、企業として女性が持つ能力をより発揮できる環境を整えることは重要ですね。
ところで、グローバル展開を進める中で、海外のグループ会社におけるD&Iについてお感じになっていることはありますか?
新浪 グローバルに目を向けると、やはり女性活躍はかなり進んでいると感じますね。ビームサントリー社はCEOこそ男性ですが、実質ナンバー2のポジションであるマーケティングやHRのトップは女性が務めています。
内永 かなり積極的に女性を要職に登用されているんですね。
新浪 「なぜ女性をトップにするのか」というと、ダイバーシティを進めていくうえでは、上のポジションで輝いている人が、若い人たちのロールモデルとしても必要ということなのです。ですから日本でも、上位職に女性を登用していくために、海外も含めていろいろなキャリアを積んでもらう機会をどんどん増やしていきたいです。ある意味きつい経験になるかもしれませんが、そうすれば、その人自身の受容力もさらに強くなり、より一層組織全体で成長できる。女性や若い人に、もっと成長のチャンスを与える体制も整えていきたいですね。
内永 女性活躍の環境を整えるためには、もちろん男性社員の理解も必要ですね。
新浪 実は、ビーム社との統合後に海外に出向した社員の事例があるんです。彼は女性活躍に対してそれほど積極的ではなかったのですが、海外の社員と共に仕事をすることで価値観ががらりと変わり、今では「もっと女性を!」と言うほどに変わったのです(笑)。
内永 とても素敵なお話ですね。そのように考え方をアップデートできたのは何が要因でしょうか?
新浪 彼曰く「とにかく話を聴くようになったこと」。特に海外の方たちと働くには、「立場や文化的な背景が異なること」を理解することが必要で、そのためには彼らの話をしっかり聴く以外の道はありません。D&Iを受け入れざるを得ない環境下で、身をもってその重要性を体感したのでしょう。
内永 その方のご経験の通り、企業の成長においてグローバルへの展開は重要で、グローバル化を進めるためには多様性の受け入れは不可欠。そのようにどんどん理解が広がっていくことが望ましいですね。
新浪 まさしくそういった経験もあって、サントリーでは会長の佐治や私も「課長・部長職への女性積極登用」 の課題意識をかなり強く持ち、先々を見据えて取り組んでいます。同時に女性役員を増やすことで、多くの女性社員にキャリアが拓けていることを示していきたいですね。
新浪 剛史 氏 にいなみたけし
サントリーホールディングス株式会社
代表取締役社長
1981年三菱商事株式会社入社。2002年株式会社ローソン代表取締役社長CEOに就任。2014年10月よりサントリーホールディングス株式会社代表取締役社長。
公職では、安倍内閣の中で、2013年より税制調査会の特別委員、2014年から経済財政諮問会議の議員、加えて、2019年からは全世代型社会保障検討会議の議員として日本国の経済財政運営に参画。また、2018年より、日本経済団体連合会審議員会副議長を務める。世界経済フォーラムのInternational Business Council、世界経済フォーラム第四次産業革命センターAdvisory Board、米国外交問題評議会Global Board of Advisors、The Business Councilのメンバー。ハーバード大学経営大学院MBA修了。
内永ゆか子(うちなが ゆかこ)
NPO法人 J-Win 理事長
1971年東京大学理学部物理学科卒業後、 日本IBM入社。1995年取締役就任。2000年常務取締役ソフトウェア開発研究所長。2004年4月取締役専務執行役員。2007年4月NPO法人J-Winを設立し、理事長に就任。2008年4月ベネッセホールディングス取締役副社長、並びにベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEOを経て、2013年6月ベルリッツコーポレーション名誉会長を退任。